9.永田くんとかーくんの残骸

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「捨てていいって……今まであまり聞かないようにしていたんですけど、元彼は一体、どんな状況で出て行ったんですか?」  永田が恐る恐るといった感じで尋ねる。 「ええっと……」  言葉を濁すと、仁王立ちだった永田は長くなりそうだと思ったのか、その場に座り込んだ。  しょうがないので私も座り込んで膝を抱える。 「まず、ハリウッドへ行くって言って、3ヶ月くらい行方不明だったの」 「はあっ!?」  素っ頓狂な声が返ってくる。  あ、前提を説明するのを忘れていた。 「えーと、その前にまず、彼は演劇をやっていました」 「あ、はい……」 「夢はハリウッドスターで、小さな劇団で劇団員をやりつつ、毎日頑張っていました」 「……働きもせず?」 「う、うん。でも、ほんとにちゃんと毎日頑張ってたんだよ」  私がフォローすると、永田は冷ややかにこちらを一瞥して、不機嫌そうにふぅんと唸る。 「で、ハリウッドへ行くって言うから、頑張ってねって応援して送り出して、そこから連絡が途絶えて────忙しいのかなって思ってたら、ある日……」  思い出して、言葉が詰まる。  少しだけ顔に熱が上り、目に涙が滲んだ。  スウェットのズボンをぎゅっと握りしめ、言葉を絞り出す。 「実家に帰って、結婚、するって」 「うわ……」  永田が絶句する。  そして彼が言うには、     
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