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地味で三十路で元カレもといヒモを10年飼ってた上に処女の私が、ラブロマンス小説を書く隠れ趣味持ち……終わった……。
「このこと、誰にも言って欲しくないですよね?」
しばし突っ伏していた私に、永田が静かに尋ねた。
顔を上げると、オフィスにはもう、私たち以外は居なかった。
と、いうことは……
「う。まさか……脅す気?」
「とんでもない。交渉の余地はありますよ」
「なにが望みなの?」
楽しそうな永田を睨みつけながら聞くと、彼は逃げ道を塞ぐように、突っ伏した私の背後から机ごと覆いかぶさり、
「あなたの事を好きにする権利」
耳元で囁いた。
「ひぁっ?!」
笑いを含んだ吐息がくすぐったくて飛び上がる。
うああっ、耳がかゆい!
耳をかこうと暴れると、真上から我慢出来ずといった笑い声が降ってくる。
「こういうのが好きなんでしょ? 趣味悪いですねー先輩」
馬鹿にしたように言って、永田が飛び退いた。
咄嗟に放った私の肘鉄が空を切る。
「三十路で、処女で、趣味でエロ小説書いてるなんて、終わってる」
「エロじゃないわよ、ロマンスよ、恋愛、純愛なの!」
「ちゃんとした恋愛した事ないくせに?」
「う! うるさい!」
若干涙目になりながらも、腕をぶんぶん振り回す。
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