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1.はじまりは一生の不覚
「ほんっと、ダメんずですねぇ」
長いため息の後、呆れた口調で3才年下の後輩、永田くんは言った。
私から『10年付き合って29才にして別れた元彼氏』の話を聞いての感想だ。
「ギャンブル借金、無職、夢追い人の役満じゃないですか。てゆーかヒモ。何がよかったんですかそいつの」
永田くんのキレの良い毒舌に、一緒にテーブルを囲んでいた若い女子社員たちが遠慮がちに笑う。
会社の休憩室で食後のお茶を飲みながら、雑談という名の尋問は続く。
「そーとー顔が良かったとか?」
「んー、まぁ、ふつー、かな。アイドルの久保川に似てて…」
「えっ、あいつビミョーじゃないですか? それに似てるって、趣味悪すぎ」
「永田くん言い過ぎだよー!」
三十路間近で貫禄のない負け組平社員の私を笑う彼女たちに悪気はなく、ただ舐め切った態度で止める気のない制止をする。
永田は何故かイライラした様子で私を軽く睨んでいた。
なんでそんなこと言われなきゃならないのだ。
そう思うものの、うまく言葉にならない。
「……じゃあ永田くんは、どんな子と付き合ってきて、どんなんがタイプなのよ」
「僕ですか?」
私の返しに、永田が驚く。
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