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3.オレンジとさくらんぼ
喫茶店に入ると、永田はアイスコーヒーを、私はオレンジジュースを頼んだ。
「僕がいて良かったですね。一人じゃスマホの契約とか出来ないでしょ」
「あんたがいなかったら、スマホなんて買わずずっとガラケーよ」
「時代に取り残されちゃいますよ?」
「取り残すような時代が悪いのよ!」
「……みんな必死でついて行ってるのに、先輩って子供みたい」
ふいに拗ねたように唇を尖らせる永田。
「そのオレンジジュースもお子様チョイスだし」
「オレンジジュースのなにが悪いのよう」
氷が浮かぶ橙色の底には、シロップ漬けの不自然に甘いサクランボが沈んでいる。半月型に切ったオレンジが、グラスの縁を彩る様に飾られていて華やかだ。
「えへ。喫茶店のオレンジジュースって好きなの」
ストローで氷をつんつん突きながらニヤニヤすると、永田は呆れたように頬杖をつきため息を吐いた。
「ほんと、お子ちゃま。あーあ……僕だって、オレンジジュース好きなのに」
カッコつけてコーヒー頼んじゃった、とひとりごちる。
いつもコーヒー飲んでるじゃない。そう思いつつ、ストローから口を離して永田の方にジュースを移動させる。
「一口いる?」
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