独りぼっちのバケモノの話

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岩は気の遠くなるような長い年月を経てやがて小石や砂となり、また長い年月を経てそれは環境の変化を携えて上に上にと積み重なり、圧がかかり地層となる。 草木は枯れ落ちても腐葉土となりその土地を肥やす糧となる。 そこに棲む微生物や植物はそれらを肥やしとし成長、活性化する。 そしてそれを動物が食べ、排泄物や死骸からまた大地は肥やしを得る。 そこに生ける者達が知らず知らずの間に培い、理解している至極当たり前な循環。 けれどそれが僕には当てはまらない。 僕はずっとひとりだった。 番も居ない。 それどころかこの世に僕と同じ存在は沢山いるがいないのだ。 姿形が似ていても人とは程遠い。 ほかの似たものたちにはみな番や対極に値する者がいた。 けれど僕にはそれはいないのだ。 それどころか僕の姿形は醜く、他にいる様々な者達を真似てようやく今の形を保っている。 僕はきっとバケモノの類なのだ。 あるいは怪異の類とでも言おうか。 いや、生とは程遠かったと言った方がいいのかもしれない。 僕は所謂神という部類のものらしい。   僕から見れば人はすぐ死ぬ。 動物はもっとすぐに。 魚の中には少し長く生きているものもいるが多くは動物なんかよりもよっぽど早く生を終える。 いつだってどんな種であれ環境の変化に耐えられるのはほんの一部。 けれど僕はそれをただ見守るだけだった。     
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