0人が本棚に入れています
本棚に追加
それらを輪廻と呼ぶのであれば僕はそれに当てはまることのない孤立した存在。
例えばこの手に持った1輪の花は放っておけばやがて枯れ土に還る。
土に還るものが命なら、枯れぬことのない偽物の花は、輪廻に還ることのないものは一体なんと呼べばいいのだろう。
けれど一つだけ確かなことは、生命が花ならば僕は偽物の花の方であるということだけだ。
この国では僕と同じような存在にも種は様々なれど、信仰や世の理と関係の無い僕はそのどれにも当てはまることはない。
僕は一体何者なのか、なぜ僕だけが1人なのか僕にはわからない。
気づいた時にはもう、僕はこの世に在った。
名を呼ばれたこともなければ、僕を具体する名はありはしなかった。
この一人称でさえ、いや、言葉と言ったらいいのだろうか。
人間やほかの神々を真似ているだけに過ぎない。
意味を理解し、同じように振舞っても結局は僕は彼らにはなれない。
ただの偽物なのだ。
しかし偽物なれど、僕は僕で。
個は個なのだ。
ただ長くこの世にいるというだけで知識ばかりが膨れ上がり、多くの命の終わりを眺めてきた。
有限の命はあっけなく消えゆく。
けれどそれは必ず何かに変わっていく。
それを悲しいとは思わなかった。
いな。悲しいとはなんなのか。
最初のコメントを投稿しよう!