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琉はそっと足音を忍ばせて、談話室の中に踏み込んでいった。
そこにいるのが本当に彼なのだとしたら、寝顔を見たいと思ったのだ。
ほんの一瞬見るくらいなら、彼も起きてはこないかもしれない。
普段めったに見ることのない彼の寝顔。恐らく同室の颯真くらいしか見ることの許されないその人の寝顔を見たい。
少しくらいなら、自分にも、その権利が欲しい。
新見叶多。高校一年の六月にこの寮にやってきた転校生。
染めているわけではないはずなのに、陽の光の中では明るい栗色に見える柔らかそうな髪と、男にしては若干大きめの澄んだ瞳。滑らかそうな肌。
田舎の山奥にある学校のやぼったい男連中の中で、その姿はやけに際立って見え、不思議なくらい心惹かれた。
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