満月の夜の夢

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満月の夜の夢

 満月の夜、僕は眠ると決まって同じ夢を見る。  どこか知らない丘の上で、僕と同じくらいの歳の少年と月を眺める夢だ。  夢の始まりは、僕が走っているところから始まる。家を出て、静かな住宅街を走り抜ける。自分の走る足音だけが、夜の中に響いていく。  まっすぐに走り続けると、いつの間にか住宅街は消えていて、僕は丘に辿り着く。  その丘のてっぺんに、少年はいつも僕よりも先に居て、草の上に座っている。  彼は僕に気が付くと笑いかけてくれ、僕もそれに笑い返す。それから、僕は彼の隣に座って、ただ月を眺める。  話をするわけでもなく、二人で一緒に月を見ているだけ。  ただゆっくりと時間が流れていく、その夢が僕は嫌いではなかった。  月はいつまでも空にあって、夢の中で夜が明けることはない。  夢の終わりは、強く風が吹くことで訪れる。  唐突にビュウ、っと強く風が吹いたかと思うと、僕は自分の部屋のベッドで目を覚ます。  だから僕はいつも夢の中で、終わりを告げる風が吹くのがまだずっと先ならいいのに、と思っていた。
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