2012人が本棚に入れています
本棚に追加
第一話
これは古より伝えし、誰もが知っている物語。
それは古い本の中に記された彼らにとっての実話。
そして人間と魔物が共存していた時代。
昔々あるところに、貧しい村に一人の娘がいました。
彼女には生まれながらに不思議な紋様が胸元にありました。
それは姫の証という紋様で魔物に嫁ぐ言い伝えがこの世界にはありました。
魔物は古くから人々を恐怖に陥れる災いだと言われています。
嫁ぐとは良い言い方で、実際は魔物の貢物で姫を生贄として魔物に捧げて災いを鎮めると言われています。
その魔物の貢物として生まれた娘は村人達に忌まわしい姫の子だと嫌われて村から追い出されてしまいました。
災いを鎮める姫だが、同時に忌まわしい姫を生んだ村は他の人間の国から迫害された過去があり…その末路は悲惨なものでした。
だから絶対に隠す必要があります、村のために娘一人を犠牲にしても実の両親達も気にも止めませんでした。
それほどまでに姫という存在は人間にとって恐ろしい魔物と変わりありません。
村を追い出された娘は宛もなく暗く肌寒い森の中をさ迷っていました。
どのくらい歩いたでしょうか、足も痛くなり力なく床に崩れた時でした。
とても容姿が優れた美しい男性二人が娘の前に現れました。
彼らは娘を一目で気に入り、歩けない娘を背中に背負いました。
娘を森の中にある素朴で小さな自分達の家に招きました。
彼らは娘に異国の地を渡る旅人だと言いました。
娘は昔から村人に嫌われていた事もあり、人間不審になっていてなかなか彼らとの距離は縮まりませんでした。
そんな娘に二人は一生懸命話しかけ温かい食事を用意し、娘も村人とは違う暖かみがあると心を徐々に開いていきました。
娘は二人の男性に初めての淡い恋心を抱きました。
しかし、そんな幸せな生活は長くは続きませんでした。
三人が住む家に、一人の女性がやって来ました。
彼女の瞳には悪魔の御子の証と言われる紋様が刻まれていました。
女性は二人の男性を手に入れるために彼女に心酔する男達に命令をして娘を殺そうとしました。
娘を守るために二人の男性は正体を明かしました。
彼らは村で恐れられていた魔物だったのです。
娘は驚いたが魔物であっても二人の男性への気持ちは変わらず、共に生きる決意をしました。
そして娘と魔物達は女性に立ち向かったのです。
愛のため、そして彼らと未来を生きるために…
それから彼らがどうなったか知る者はいませんでした。
「これは現代に続く古代の呪いの物語」
最初のコメントを投稿しよう!