第三話

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息を乱している、遅刻するような時間じゃないのにどうかしたのだろうか。 必死すぎて俺と玲音の方を見ない二人に首を傾げた。 「どうしたんだ?いったい」 「…学の、学の大群がぁ…」 英次はドアの向こうを指差し意味不明な事を言っていた。 とりあえず落ち着かせるために英次の背中を撫でる。 学兄さんの大群っていったい何の事だろうか、学兄さんは一人しかいないと思うけど… よく分からず玲音を見ると苦笑いしていた、玲音はなにか知ってるような顔をしていた。 「森高学くん親衛隊の事だね」 「……朝にアレを見るのは心臓に悪い」 いつも涼しい顔で飛鳥くんも珍しく顔色が悪い。 親衛隊ってなんだろう、この学院の常識かなにかか? 聞きたいが目撃した本人達は疲れ気味で廊下に寝転んでいるから聞けない。 とりあえず台所に向かって二人分のコップに水を入れ二人に渡した。 玲音は二人に代わって状況を理解していない俺に説明してくれた。 「森高学くん親衛隊ってのはね…森高学くんを異常に崇める人達の事だよ、森高学くんに近付く奴は制裁とか酷い事をしちゃうんだって」 「……そ、そんなのあるのか」 学兄さんが人気者なのは生まれてからずっと見ていたが親衛隊とかいうのは初耳だ。 昨日この学院の学兄さんの人気を目の当たりにしたが、なんか少し異常な怖さを感じた。 …盲信というか心酔というか…それが親衛隊とかいうのだろうか。 学兄さんは昔からよく飛鳥くんを追いかけていたから今朝もそれで逃げてきたのだろう。 一息つき、落ち着いたのかしばらくドアに聞き耳を立てていなくなったのを見計らって廊下に出る。 ……学兄さんが大きい声で誰かと話してくれたから分かりやすかった。 まだ警戒してる飛鳥くんと英次は左右の廊下の先を確認してやっと寮室から出た。 本人達は真剣でも何も知らない周りから見たら怪しいだけだろうな。
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