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俺の後ろを歩いていたのに、いつの間にか身長が抜かれて俺の前を歩くようになった。
中学生に上がる頃から飛鳥くんが俺を守ると言い出した。
飛鳥くんは俺が虐められている時、非力だったから助けられなかったとよく泣いていた…俺を庇ったら飛鳥くんまで虐められていたかもしれないから俺はそれで良かったと思っている。
飛鳥くんのその気持ちだけで俺は嬉しかった。
俺のような人を一人も増やさないのがいいに決まってる。
中学に上がる頃には飛鳥くんは体育会系の部活に入り体力も付け、俺達の共通の友人と共によく俺を守ってくれようとしたが、俺も弱いままの自分は嫌で己の身を守るために力を付けたから、守ってもらわなくても大丈夫だ。
とても悔しそうにしていたが、俺はそんな弟の優しさをちゃんと分かっている。
もう俺は一人ではない、俺をちゃんと見てくれて味方になってくれる人がいる。
だから俺は強くなる事が出来たんだ、飛鳥くんや中学から出来た友達のおかげだ。
しかし飛鳥くんは昔から学兄さんの事は嫌いのようで学兄さんが話しかけると今のように嫌な顔をする……学兄さんは俺みたいに醜くないから飛鳥くんの事は大好きみたいだが…
「…耳元でギャーギャー騒ぐなよ、うるさい」
「何だよ!!そういう事を言っちゃダメなんだぞ!!」
確かに学兄さんは普通より一回り声が大きい。
そして学兄さんは常に自分が中心じゃないと気が済まない性格だ。
それはクラスの中でも家の中でも注目を集めたいのだと分かる。
その話題も、学兄さんにとっていい話でなくてはならない。
だから学兄さんをうるさいとか言うと可愛い目を吊り上げて怒る。
周りは学兄さんの話をしてついでのように俺を比較して罵倒しているから全部学兄さんが悪いんだと昔、飛鳥くんが言っていた。
俺にも人をイラつかせるなにかがあったのかもしれない、学兄さんが全て悪いとは思わなかった。
飛鳥くんは並の人間が通えない超難問の全寮制男子校のクロス学院に通う事が決まっている。
学兄さんも試験を受けたが、落ちたようで自分ではなく問題用紙に問題があると騒いでいた。
俺は元々受からない事が分かりきっているからクロス学院の試験そのものを受けていなくて、並の公立高校に行くことになっている。
勉強も何もかも普通な俺には、相応しい学校があるから…
飛鳥くんが遠くの高校に行くのは寂しいけど、休みの日は会えるよな。
俺と学兄さんは高校が一緒だから、飛鳥くんが居ない事以外は何も変わらない日常なんだろうなと分かる。
「学ちゃんを落とす高校なんて大した事ないわ、学ちゃんが受かった高校だって名の知れた高校じゃない!」
「嫌だ!!飛鳥と一緒がいい!!」
お母さんが台所からやって来て学兄さんをなだめていた。
学兄さんはお母さんにわがままを言って騒いでいた。
お母さんも学兄さんと性格が似ていて、俺と飛鳥くんそっちのけで学兄さんだけを可愛がっている。
俺なんて「アンタなんて産まなければ良かった」と言われるほどに邪魔な存在だと思われている。
小さい時は不思議だった、何故学兄さんや飛鳥くんには怒らないで俺は叩かれるのだろうと…
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