第三話

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入試を受けてないから一番下のF組なのだろうか。 戻ってきた教師が一秒も時間を無駄にしたくないのか、教師に制服の襟を掴まれて教室の中に押し込まれた。 なんとか倒れずに体勢を整え教卓の前に行く。 後からやる気なさそうにだらけている教師が入ってきた。 「自己紹介とか面倒だから個人でやれ、席は適当に空いてるところな」 俺と英次は名前だけでも言わなくていいのかと思ったが、担任がさっさと行けと無言の圧力を掛けてきた。 空いてる席を見ようと教室の中を見渡す。 生徒がほぼ全員俺を見ていた。 これは明らかな殺気だろう。 人間のにおいは消したし、俺が人間だと知ってるのは一部の生徒だけではないのか? もしかしたら着ている制服に問題があるのかもしれない。 英次は支給された制服だが、俺は前の高校の茶色いブレザーを着ている…だから異端に見えるのかもしれない。 英次が心配そうに見るから微笑む。 この教室のリーダーのように俺を睨んでいる学兄さんは俺が選んだ席を見て隣の学兄さん好みの爽やかな少年とガラの悪そうな不良のような生徒とクスクス笑っていた。 あまりいいとは思えない笑い声で、聞きたくなくても耳に入ってくる。 …なんだ?この机がどうかしたのか? 俺が席に着き英次も俺と同じように隣の席に座ろうとした。 俺達の前の席の気弱そうな少年が恐る恐る英次に言った。 「き、今日休んでるけど…その席はダメだよ」 「えー、そうなのかよ」 英次は残念そうに席から立つ。 それから改めてキョロキョロと周りを見ると、俺と真逆のドア側の席しか空いてなかった。 英次が「寒いー遠いー!!」と叫んでいたら担任が教卓を蹴り飛ばしたから大人しくドア側の席に向かった。 飛ばされた教卓はカタチが変形していて、近くにいた生徒が戻していた。
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