2013人が本棚に入れています
本棚に追加
学兄さんや飛鳥くんのテストの点数が悪いと、俺が邪魔をしたからだと殴られた事が何度もあった。
親の愛情を今まで感じた事がない、反省という名の家を追い出された時…家の前を通る家族連れを眺めていた。
俺と同じ歳くらいの男の子と母親が歩いていた。
今日学校でなにが起きたのか楽しげに話していて、繋がれた手を振っていた。
どんなに振っても、離れる事はない手を見つめていた。
俺がいい子でいたら、きっと…お母さんも優しくしてくれるんじゃないかって思っていた。
だから殴られても両親の事を誰にも言わなかったし、言う事は何でも聞いてきた。
そして今に至るが、お母さんが優しくなる事はなかった。
今では殴られはしないが、昔の癖が染み付いていて両親に反抗をする気にはならなかった。
いつも俺の代わりに飛鳥くんが言ってくれるが、俺は気にしていないと飛鳥くんを止めていた。
お母さんは学兄さんに見せた優しい顔ではなく、冷たい瞳でこちらを見ていた。
その瞳は俺にだけ向けられている瞳で俺に用があるのだろう。
「……瑞樹、新聞取ってきなさい」
「はい…」
これはお願いではなく、命令されたような威圧感が含んでいる。
…これが俺の家でのいつも通りの立ち位置だ。
家族としてというより、使用人に近いのかもしれない。
雑用は俺の仕事だ、これがこの家で俺に出来る事だ。
考えによっては悪い話ばかりではない、今すぐにでも一人暮らしが出来るくらいには料理も掃除も得意になった。
ちゃんと学校に通わせてくれるし、世間の目もあるからか必要最低限の事はされてるから文句はない。
それに高校を卒業するまでの辛抱だ、卒業したら俺は一人暮らしをする事に決めている。
飛鳥くんは立ち上がった俺を心配そうに見つめていた。
「…瑞樹」
「大丈夫だよ」
最初のコメントを投稿しよう!