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それをいつも見ていて俺はそれが羨ましかった。
学兄さんは俺と喧嘩どころか会話もしたくないみたいで一方的に怒鳴るだけだから話す隙がない。
飛鳥くんは俺に反抗的ではないから喧嘩すらならない。
兄弟がいるなら、兄弟喧嘩に憧れるが俺を相手にしてくれる人は誰もいない。
学兄さんに反抗したら母やいろんな人が出てくるから喧嘩ではなくなるし、飛鳥くんとは喧嘩するほどの事は起こらない。
飛鳥くんは学兄さんのところに近付くと学兄さんはリビングのドアを開けていて、いつでも逃げられるようにしていた。
飛鳥くんは怒っているが、学兄さんは楽しそうだった。
「兄貴、俺のだろ…返せよ」
「いいじゃんちょっとくらい」
「ちょっとって、俺のだろ」
「あれ、これって」
「話聞けよ!」
やっとこっちを見た飛鳥くんに満足そうに笑っていた学兄さんだったが、封筒を勝手に開けようとして宛名を見ると固まっていた。
俺は宛名を見ていないが、飛鳥くんの名前が書いてあるだけだと思っていた。
いつもの余裕そうな顔とか怒った顔ではなく、学兄さんの色白な顔がみるみると青ざめていた。
学兄さんの見た事がない珍しい顔だ、宛名だけで何故そんな顔になるのか分からない…いったいなにが書かれていたんだ?
手紙を持つ手が微かに震えていて、怒っているような焦っているような戸惑っている顔をしていた。
さすがに飛鳥くんも変に思ったのか封筒を取り返そうと手を伸ばしたら学兄さんは飛鳥くんから距離を取りテーブルの椅子に座り新聞を読む母の後ろに隠れて顔だけ出していた。
こうなったら飛鳥くんは下手に動けなくなり、舌打ちする。
飛鳥くんは母に嫌われているわけではないが、学兄さんに強く怒ると何故か俺のせいだと母は怒る、だから飛鳥くんは母には逆らわないようにしていた。
俺は母に責められ理不尽な暴力にも耐えていたから気にしていなかった、だから飛鳥くんがそんな事を考えていたなんて知らなかった。
母を刺激しないように、なるべく穏やかに学兄さんに言っていた。
でも、言葉の一つ一つにトゲを感じて飛鳥くんの怒りが伝わってくる。
「早く返せよ、兄貴には関係ないだろ」
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