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「かっ…関係ある!!俺のだから!」
「……は?」
学兄さんはちょっといつもより大きめの声で叫んでいた。
大切に手紙を抱えている学兄さんに俺は驚いた。
てっきり飛鳥くんのだと思っていたが、学兄さんの手紙だったのか…確認しなかったのは俺の責任だ、申し訳ない事をしてしまった。
飛鳥くんは全く信じていないのか、学兄さんの嘘だと思い眉を寄せていた。
よくある事だけど、あんなに慌てた学兄さんは初めて見た…もしかしたら本当なのかもしれない。
学兄さんは封筒を誰にも渡さまいと急いで走り飛鳥くんの横を通り過ぎて、リビングを出てから自分の部屋がある二階に上っていく足音が聞こえた。
お母さんは学兄さんが心配で学兄さんを追いかけてリビングを出ていった。
取り残された飛鳥くんは学兄さんの行動が理解出来なかったが、学兄さんがあの状態じゃ追いかけたとしても部屋に鍵を掛けて、入れてもらえないと分かるからまたソファーに座ってテレビを見ていた。
俺のせいだから学兄さんに謝ろうと追いかけようとしたが、飛鳥くんに腕を掴まれた。
「行っても母さんに追い返されるだけだから、どうせ飯の時間には来るんだから待ってればいいよ」
飛鳥くんは俺の考えを見透かしたようにそう言った。
確かに母さんが学兄さんを追いかけていたからその可能性はある。
飛鳥くんの言う通り学兄さんが部屋から出てくるまで待とうと、出来上がった朝食の皿をラップで蓋をしてから床に座りテレビを見た。
飛鳥くんに「そんな硬い床じゃなくてソファーに座ればいいのに」と言われたが、こっちの方が落ち着くからと遠慮した。
テレビ画面にはお笑い芸人がいて、笑い声が聞こえていた。
俺は芸能人とかよく分からず、何となくテレビを見ている事が多くて笑い所が分からない。
テレビの向こう側と俺が住んでいる場所はあまりにも違いすぎて不思議な気分になる。
上を見上げて、飛鳥くんの顔色を伺うと眉を寄せてテレビを睨んでいた。
さっきの事がまだ気に入らないのか、不機嫌だった。
こうなった飛鳥くんは触れてほしくないというオーラを出している。
気付かないフリをして、目の前のテレビを見つめる。
決して楽しいバラエティー番組を見ているような表情をしていない俺達はテレビを見つめていた。
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