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第四話
目を覚ましたら見慣れた白い壁紙の天井が見えた。
部屋にしては私物が少ない殺風景な部屋、俺の部屋だ。
ふかふかなベッドに身を沈めていていつ戻ったか記憶にない。
布団を少し捲る、シャツにズボンだが俺が持っていない服だった。
サイズも一回り大きなシャツで袖がぶかぶかだ。
もしかして玲音の服か?貸してくれたのか、後で洗って返そう。
立ち上がろうすると腰に全然力が入らなくて驚いた。
俺は玲音と初めてしたんだ……夢じゃなかったのか。
何だか安心した、俺が欲しいと言ってくれた玲音が俺の幻想じゃなくて…
控えめにドアを叩かれて俺は「どうぞ」と言い招いた。
「瑞樹、大丈夫?ごめんね…初めてなのにがっついちゃって…」
「大丈夫だよ、俺も求めてたからお互い様だ」
玲音は頬を赤くしながら嬉しそうに部屋に入ってきた。
玲音の手には小ぶりサイズの土鍋を持っていた。
土鍋なんて部屋にあったのか、気付かなかった。
ベッドの横のサイドテーブルに慎重に土鍋を置いた。
玲音はベッドに座りウキウキ気分で土鍋の蓋を開ける。
そういえば結局食堂の飯は食えなかったから朝から何も食べてないな。
俺も腰と尻に気を付けながら上半身だけ起こす。
「瑞樹のために作ったんだよ!食べて!」
「…あぁ、あり…が…」
玲音はスプーンで土鍋の中身を掬い俺の口元に持っていく。
…あれ?玲音は土鍋でいったい何を作ったんだ?
俺の目の前にあるものは俺が知らない料理だ。
なんだろう、イカスミパスタ?
そう思うほどに真っ黒な炭のような物体だった。
玲音は初めて母親の手伝いをした子供のようにとても得意げな顔をしていた。
「飛鳥くんに教えてもらったお粥だよ!病気の人間はこれを食べるんでしょ?」
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