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あれは俺がまだ小学生の頃、俺は醜いアヒルの子と虐められていた。
俺には同じ歳の血の繋がった双子の兄と弟がいた。
兄は大きな瞳に小柄で守ってあげたくなるような可愛い顔をしていてクラスの人気者だった。
弟もまたカッコイイ顔をしていてクラスの(主に女子の)人気者だった。
そして俺は二人と血が繋がっていないのではないのかと思われてしまうほどの地味な子供だった。
キラキラした兄弟と違う俺はイジメの標的だった。
「やーいやーい、醜いアヒルの子ー!!」
「本当はお前、学くんと飛鳥くんの兄弟じゃないんだろ!!」
「い、痛いよ…やめてっ」
同級生の子供にランドセルを投げられたり、給食に牛乳を入れられたりするのが当たり前。
何も反撃してこないから、いじめっ子達は調子に乗り罵倒されたりする毎日だった。
イジメをしない同級生も遠くから眺めていて楽しんでいるようにクスクス笑っていた。
俺はとても醜い、両親からもそう言われている。
生まれてこなければ良かった、そう言われたのは何度目だっただろうか。
鏡を見ても他の人と違いが分からないが、いつしか自分でもそうなんじゃないかと思い始めていた。
俺は誰にも必要とされていない、醜い存在なんだと思っていた。
今日も学校帰り通学路の人気のない道で押されたりしてイジメられていた。
コンクリートに頭をぶつけて、ランドセルの中身を道端にばらまかれて踏まれる。
また母に怒られる、身体に痣が出来るほど叩かれてしまう。
でも、俺に痣が出ても学校の教師までも気にも止めない。
俺が虐められているのを知っているから、また喧嘩で怪我をした…その程度としか思っていないのは顔を見ていれば分かる。
無関心の人形のような感情のない瞳で見られるのが嫌で教師が苦手になった。
立ち上がろうとしても、また腕に体重を乗せて押される。
足が擦りむいて、熱くて痛くて…でも泣いたらまた殴られるから我慢する。
殴るのは目の前のいじめっ子ではなく、母の事を思い出して震えていた。
子供は純粋だからか、遊び感覚で残酷なイジメをするんだと今なら思うがあの時は分からなかった。
誰も頼れる味方は居ない、地獄のような毎日だった。
でも、そんな俺にも頼れる存在が一人だけいた。
……この時、必ずと言っていいほど助けてくれるのは…
「何やってんだよお前ら!!」
「ま、学くん…」
大きい声で走ってくる可愛い顔の兄…学。
クラスの中心的存在で人気者で自慢の兄だった。
困っている人は助けるし、人の痛みに涙が出る心が綺麗な存在。
そう、周りは学に対して抱いていたそれは俺もそうだった。
…自慢する人がいなかったから心の中で憧れていた。
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