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いつもの大きな声を抑えて慎重に話を進める。
謙虚の方がいいかと思ったが、この場合はハッキリ言った方がいい。
可愛さも忘れない、こういう奴は押し通せば何とかなる。
世渡りは上手いんだ、少し話しただけでソイツが好きそうな自分を演じる事が出来る。
騙すのなんて、俺にとっては何でもない事だ。
話していると、意外と物分りがいい理事長らしくて俺の口元が緩みっぱなしだ。
……やはり大人は馬鹿で間抜けだと内心笑いが止まらなくなる。
俺の作った不幸話を黙って聞いていて、聞き終わったら同情される。
家族には蔑ろにされ、兄弟にはいじめられても頑張っている。
いつか、未来に眩い光が差し込むのを夢見ている。
俺が理事長だったら、そんな話絶対に信じないけどな。
時々よく分からない言葉を言っているが、それはどうでもいい。
理事長の話なんて、ほとんど聞いていないし聞く必要がない。
俺の話だけが大事なんだ、理事長の話なんて聞く時間がもったいない。
そんな暇があったら、俺に構えばいいんだ…俺がこの世界の主役なんだから!
大事なのは俺を学校が受け入れるかどうか、それだけだ。
『君が姫と呼ばれているなら本物だろう、間違えてしまってすまなかった…正式な書類を後日送ろう』と言われやっと自分の非を認めたかとため息を吐く。
長かった、もうそろそろ疲れてきたところだった。
普通ならここで終わるが、黒い封筒を片手で握り潰した。
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