第一話

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「俺、なんかが入学したら瑞樹が可哀想で…瑞樹の代わりが出来るかどうか」 可哀想だなんて思った事は一度もない、むしろ早く死んでほしい。 俺の知らないところでひっそりといなくなるのが理想だ。 死ぬ姿は爽快だろうけど、顔を見たくないというのがある。 瑞樹の代わりという言葉に反吐が出るほどの胸糞悪さを感じながらもう少しの辛抱だと自分に言い聞かせる。 瑞樹は悪者だけど、俺は瑞樹も心配する優しい子。 理事長の声からして俺が何を言ってももう入学させる気しか感じない。 さらに、理事長の中での俺の印象を作っていく。 そして瑞樹に悪い噂ばかりを話した…全て俺の作り話だが皆が信じてるなら、もうそれは事実と変わらないよね。 顔は見えないが理事長の声が低くなったのを感じて瑞樹を嫌ってるんだろう事は簡単に想像出来た、今までの近所のおばさん達もそうやって味方に付けてきたんだ。 家では家族に暴力を振るって暴れているというのが瑞樹の印象だ。 口も悪いし、皆瑞樹の言いなりで支配されている。 実際の瑞樹がどうかなんて、そんな事は関係ない。 小学生の時同級生達には瑞樹は汚い事ばかりして兄としてどうしたらいいか相談するフリをして瑞樹と俺の印象を植え付けた。 子供は単純で見事に引っ掛かって一人でこっそり笑った。 もしかしたら、瑞樹の悪行を信じているのは瑞樹が本当に悪者だからなのかな。 皆、瑞樹の洗脳から解放してあげないといけない。 俺が絶対に瑞樹を懲らしめてやる、だから皆待っててね。 そして今日から理事長も俺の信者の一人になった。 『今調べたら特待生枠だったみたいで君がいなくてはならないんだ、しかし偽物を入学させるところだったありがとう…君なら立派な姫になるだろう』 「…はい、頑張ります」 特待生枠?俺が?…まぁそれくらい当然だけど、瑞樹が特待生になるところだったなんて腹立たしい。 立派な姫というのがまだ分からないが俺の入学を許可した事だけは分かった。 いろいろ詳しい事は入学時に話してくれると言っていた。 入学の案内は後日送る事になって、行く予定だった学校の制服もキャンセルしないとな…と冷静に考える。 あまり長く話すと母親が電話出来なくなると思い電話を切った。 部屋から出て、部屋の外にいてそわそわしていた母親が理事長に電話して、母親の力はほとんどいらなかったが俺の入学は確定した。
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