2013人が本棚に入れています
本棚に追加
今までの学兄さんに抱いていたイメージを粉々と壊される衝撃だった。
やっぱり俺はあの家の子じゃなかったのだろうか。
だから…兄弟と違いすぎる醜い容姿で生まれてしまったのか、醜いアヒルの子のように白鳥になれなかった出来損ない。
今なら俺を庇っているように聞こえたあのセリフも学兄さんが周りに聞こえるように言う事で自らの株を上げていた事は分かっている。
地面に落ちた俺のノートを新しく買ってもらったであろうスニーカーで踏みつけていた。
俺の靴はサイズが合わなくても学兄さんのおさがりのボロボロのスニーカーしか与えられなかった……新しいものなんて、何一つない。
学兄さんに蹴飛ばされて、俺の目の前に泥まみれになったノートや教科書などが滑り込んできた。
当時のまだ小さかった俺には何も理解が出来なかった、学兄さんの事も…自分の存在価値すらも…
ノートや教科書を掻き集めて、最後に転がっていたらランドセルを持ち上げて詰めようと思った。
しかし、学兄さんは俺の手を踏みつけてグリグリと楽しそうな顔をして痛めつけた。
手だけではない、小さな心は悲鳴を上げていて、この場にいる事が耐えられなくなってランドセルにノートとかを無理矢理押し込んで抱えて逃げ出した。
後ろから学兄さんの天使のような顔とは思えないほどの悪魔の笑い声を上げているのが聞こえたが、一度も振り返る事はなかった。
しばらく走り続けていたが、そろそろ息が苦しくなった時に立ち止まりしゃがんで泣き出した。
「うぅ…ぐすっ」
誰もいない大きな住宅街の真ん中に座る小さな俺……子供ながらに惨めなように思えた。
同級生や大人達に見放された俺には唯一頼れるのは兄だけだった、だけど本当は誰も俺を必要としていない一人ぼっちだったんだ。
何処にも居場所がない、これからどうしよう。
風が強く吹いていて、タンポポの綿が飛んでいく。
このまま消えてしまったら、どんなに楽なのか考えてしまう。
そしてしゃがむ俺の目線に二人の子供の足が見えた。
何故俺の前に立っているのか不思議に思い、目を丸くしながら恐る恐る見上げた。
「どうしたの?君」
「泣いてんのか?」
そこに居たのは、見た事がないようなとても綺麗な二人の違うタイプの子供が俺を見下ろして立っていた。
一人は糸のように繊細な銀色の髪の少女ともう一人はずっと見つめていたら吸い込まれてしまいそうなほどの綺麗な黒髪の少年だった。
……醜い俺とは生きる世界が違う、話しかけるのもおこがましい。
ずっとそう言われて生きてきた、だから自分に自信が持てなかった。
彼らは学兄さんとかと一緒にいた方がお似合いだ。
最初のコメントを投稿しよう!