第一話

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綺麗な子は顔だけじゃなくて心も綺麗なんだな。 俺も顔が醜いならせめて人に優しくしようと思っていたが、彼らを見ていると俺の優しさなんてちっぽけなものなんだなと思った。 人が困っていたら助けよう、でも助けても感謝されるわけではなく鬱陶しそうに見られるだけだ。 …感謝されなくても、誰かの役に立つなら俺は構わないと思った…それが俺が生きている価値になると思っていたが、彼らのような何の見返りもない優しさはなかった。 結局俺は生きる価値が欲しかっただけだ、彼らとは全然違った。 青い薔薇の花を持つ手とは反対の擦りむいて赤くなった手を見つめた。 まだ少し熱を持ってジクジクと痛みを与える傷、手を握りしめた。 「……おれ…に?…嘘だ」 誰に言うでもなく、独り言のつもりで呟いた。 すると銀髪の子は悲しそうな顔をして俺を見ていた。 周りがいつも俺にするような可哀想なものを見るような目ではなく、心が締め付けられるような気持ちになる。 いくら独り言とはいえ、目の前に本人がいるのに言うべきではなかった。 彼をこんな顔にしてしまったのは自分のせいだ。 「…どうして?」と銀色の子は聞いてきて「だって俺は醜いアヒルの子だから」と本当の事を言う。 二人には俺の事を何も知らないままで居てほしかった。 俺の周りのあの人達とは違うが、心の何処かで周りの人みたいな目を向けられるのではないかと恐れていた。 でも、それと同時に隠し事はしたくはなかった。 だから、俺を知らないでほしいと思う裏腹に俺を知ってほしいと思う自分もいた。 二人は俺を知らないから言っている意味が分からず、首を傾げたから俺は醜いアヒルの子の意味を教えた。 俺は兄弟の中で一番の出来損ないの醜い存在で、皆が言っている事だからそう思うのは当たり前なのだと… 誰もがそう思っている事だし俺もそう思っている、遠慮しなくていい…はっきり言ってくれた方が俺も嬉しい。
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