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黒髪の子の事を聞こうと思ったが、銀髪の子が俺の横を蹴っていた。
なにかあるのかと下を見たら、黒髪の子が倒れていた。
黒髪の子は俺の下にいて、さっきまで座っていた事になる。
慌てて駆け寄り、しゃがむと小さ呻き声が聞こえた。
俺のせいで、何処か怪我をしてしまったのかもしれない。
「ごめんね、俺のせいで…俺…」
「俺が庇ったんだから気にするなよ、自分でやった事だから」
泣きそうな顔になっていたら、黒髪の子が起き上がり俺の頬を軽く伸ばした。
ニッて笑顔を向けてくれて、一緒に立ち上がった。
銀髪の子は俺にずっと申し訳なさそうに謝っていた。
俺は大丈夫だから、そんなに落ち込まないでほしい。
それを伝えると、やっと笑顔を向けてくれて俺も嬉しくなった。
黒髪の子は銀髪の子に文句を言っていて、また喧嘩を始めてしまった。
俺が蚊帳の外にならないように、喧嘩をしながら二人は俺と手を繋いでいた。
こんなに他人と触れ合ったのは、初めてかもしれない。
二人の手を少しだけ強く握ると、気付いたら二人は笑みを浮かべていた。
俺が無事に帰れるように二人は護衛をすると俺を真ん中に三人で帰り道を歩いた。
いつも歩いている道だが、今日は景色が明るく見えた。
笑いあい、とても楽しく短い時間を過ごした。
こんなに笑ったのはどのくらいぶりだろう、もしかしたら生まれて初めての事だったのかもしれない。
彼らは名前と年齢ぐらいしか教えてくれず、何処の小学校とか何処に住んでるのかとか教えてくれなかったが近所に住んでいればまた会えるだろうと思っていた。
その考えはとても浅く、彼らと会う事はなかった。
あの後また会いたいと何度も同じ場所に訪れたが、少年達はいなかった。
あんな目立つ容姿だ、他の人に聞いてみたが…知る人はいなかった(それどころか、俺の妄想だと馬鹿にされた)
貰った薔薇は枯れてきて、俺は探すのを諦めた。
俺は無意識になにかしてしまったのだろうかと不安で不安で苦しくなった。
そしていくつもの時が過ぎ、いつしか思い出も忘れていった。
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