第三話

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目が熱くなり、涙が溢れてくる。 目元を押さえてうずくまる俺を見て英次は必死に声を掛けるが、返事する余裕がない。 あれは、なんだ?人間が嫌いと言ってたから攻撃したのか? 教師も…味方じゃないという事か? 「っ…」 「瑞樹に何すんだよ!!お前誰だよ!いい加減にしろよ!!」 英次は教師でも問答無用で喧嘩腰になっているから返事の代わりに英次の腕を掴み止めた。 止めないと一人で突っ走りそうだと感じた。 ヤクザみたいな人が「目に害はないから安心しろ」と言ってたからホッとした………念のため後で目を洗っとこう。 俺を攻撃したわけじゃないのか?じゃああれはなんだ? やっと少し目を開ける事が出来て涙目で見づらいが、ヤクザみたいな人が持ってる女性が好きそうなピンク色の香水のような瓶が見えた。 …アレをかけられたのか。 「人間臭いから消しただけだ、俺に感謝しろ人間」 「…あ、ありがとうございます」 よく分からないが、臭かったならありがたい。 人間のにおいは人間には分からない。 これでしばらくは人間だとバレずに過ごせると思っていいんだよな。 目の前の人が敵か味方かなんて分からないが、少なくとも敵意はなさそうでホッとした。 なにがきっかけで敵意になるか分からないから油断は出来ないけど… 瓶を再び内ポケットに押し込み俺達を通り抜けてヤクザみたいな人は歩き出した。 何の説明もないから呆然と突っ立っている俺達にイライラしたようで一度立ち止まり振り向いた。 「テメェら編入生だろ!!五秒以内に来ねぇとぶっ殺すぞ!!」 「「はっ、はいっ!!!!」」 ヤクザみたいな人は担任だったみたいだ…初めに言ってほしかったな、臭いを消す前に… シャツもめっちゃはだけてるし、顔は強面の男前だし目付きがヤバイし……よく教師になれたなとは思う……魔物だからだろうか。 歩くこと数分で担任が足を止めて俺達を見た。 まだ目が痛い、早く洗い流したい。 「俺が入るまで絶対に来んじゃねーぞ」 そう言い乱暴に教室のドアを開けて入っていった。 教室にはF組と書かれていた。 成績順か分からないが廊下の地図を見るとS,A,B,F組に別れている。
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