第二話

33/51
1978人が本棚に入れています
本棚に追加
/366ページ
友人である事は変わらないから、同室になっても大丈夫だろう。 それから飛鳥くんと理事長は無言で睨み合っていた。 吸血鬼だって人を選ぶ権利くらいある、俺なんか襲わないと思うが… 標的が吸血鬼にとっての餌という意味だったらヤバいのかもしれない。 でも、今まで悪意を沢山見てきた俺からしたら白山先輩に悪意は感じられない。 他の吸血鬼は会っていないから分からないが、白山先輩なら大丈夫だ。 学兄さんは白山先輩が登場してから、全く興味がなさそうだった。 俺に野宿させようと、必死に理事長に言っていたが飛鳥くんと英治が反対していた。 もう野宿の話はいいのか、ピタリとその話は止まった。 学兄さんは吸血鬼と俺が同室だと分かりニヤニヤ笑っていた。 白山先輩も飛鳥くんがなんで怒ったのか分かり、慌てて言った。 「おっ、俺は人は襲いませんよ!…なんか怖いし、だから安心して下さい」 「……瑞樹に手ぇ出したらぶっ殺すからな」 白山先輩が何を言っても、飛鳥くんの怒りは鎮まらなかった。 それでも同室を変える気は理事長にはなかった。 理事長には、俺と白山先輩を同室にする事に意味があるようだった。 理事長の学兄さんと同じ顔をしているところからいいものではなさそうだ。 白山先輩を睨んで怒りのままソファーから立ち上がった。 びっくりして避ける白山先輩を通り過ぎて、早足で理事長室を出ていった。 俺達も飛鳥くんに続き理事長室を後にした。 部屋に残された理事長は理事長席に戻り静かに微笑んだ。 やっと騒がしい奴らが行ってくれた、姫だけでいいのに問題児が増えた。 あの吸血鬼の生徒と同室にしたのは、早く森高瑞樹には退出してもらうためだ。 人生という名の大舞台から、死というものを通して… 「……人間などすぐに死ぬだろうが、それまで…楽しみにしておこう」 さぁ、楽しい楽しい人間狩りの始まりだ。
/366ページ

最初のコメントを投稿しよう!