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一息ついて、セナは額に滲んだ汗を手の甲でゆっくり拭う。
そしてふふっと笑みを浮かべる。
「さ、御付きとしての仕事をしなくちゃね」
呟くと箱を大事そうに抱え、セナは自分の部屋へ帰って行った──。
セナが出ていった扉を見つめ、ザイードは小さく口にする。
「……本番までお預けか……」
ふと見上げた愛美にザイードは視線を移す。
「そんな内緒事を耳にしてしまうと益々待ち遠しくなるな……」
嬉しそうな笑みを優しく浮かべ、ザイードは愛美の顎先に指を添えた。
愛しい妻──
妃となる愛美とそしてその腹に宿した大切な命。
愛美の顔を上向かせ、ザイードはその唇をゆっくりと塞いでいく。
まるで三つの命が一つに繋がるように、ザイードは愛美を抱き締めながらその場で深い口付けを交わした。
大きくなり始めたお腹を押さえ付けないように、大事に包み込むようにして愛美とその腹の子を優しく抱き締める。
愛美の肩に置かれた手は、ゆっくりとその御腹に当てられていた。
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