第一話

2/31
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/354ページ
「いいよな、書籍部は。単純なデータ打ち込みで給料もらえるんだから。俺らなんて毎日頭使って、足使って、いろんなとこ行ってやっと仕事を取ってくるんだぜ」 責めるような目で見る社員は、はぁ、と大きなため息をついてルカを上から見下ろす。背が高いって大変そうだな、とルカは目だけで応えた。大手会社、小宮シティにとって営業部は花形だ。仕事のほとんどは営業が回している、といっても過言ではない。お金を管理する経理部や会社のための人事部を除けば、あとはそんなに重要ではないと会社の上役たちも言っている。 営業部の魅力で、人柄で仕事が山のようにやって来てお得意先ができる。得意先の好みや状況をそれぞれ報告書として提出し上役へと回す。それが終わった後こうしてルカのいる書籍部へと持ってくるのだ。データは保管し管理するのは大変だが、データベースとして残しておけば何かと便利で、営業が好きなときに情報を得ることができる。誰でもできる仕事。それが書籍部の仕事でもあった。 「しっかし、書籍部って。上役たちが気まぐれにつけた名前で通ってるんだから、ある意味すごいよ。まあ、それだけ適当なんだろうさ」 あらかた愚痴まぎれに言いたいことを言うと、いつもの社員はさっぱりとした顔に戻る。いつまでも愚痴を言ってはいられないらしい。 「じゃあ、頼んだよ。いつものように、明日までに」     
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!