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素直に、「中田くんだよ」と答えられたら、楽になれるかな。
でも、友達でもいられなくなっちゃうよね。
それに、これから勇気を出して美咲に告白しようとしている中田くんの気持ちを萎えさせたくない。
美咲もきっと、中田くんのことを好きなはずだ。
美咲は私には言わないけれど、中田くんのことを好きな私にはわかる。
「私も中田くんの恋、応援する。だから、中田くんも私の恋、応援して」
私は中田くんの右手を取った。
「葵?」
「お願い。この手で、頑張れって、私の頭をポンポンってして?」
中田くんは、一瞬キョトンとしたけれど、すぐに優しい笑顔になった。
私の頭の上に、中田くんの右手が置かれる。
「頑張れ、葵」
ポンポンってしてくれる中田くんの右手から、ちょっとだけ元気をもらった。
「ありがとう、中田くん」
「なんだよ、これくらい、当然だろー?俺は葵の味方だからな」
もう一度、私の頭を撫でてくれた中田くんの手は、静かに私から離れると、私の持っていた紙飛行機を手に取った。
そして代わりに私の紙飛行機を返してくれる。
「俺も頑張ってくるよ」
「うん、頑張ってね。私も中田くんの味方だから」
席替え、やっぱり中田くんのことがよく見える席がいいな。
美咲と仲良くしてる姿が目に入る場所だったとしても、中田くんの背中を見つめていたい。
素敵な失恋って言ったら、なんか変かな。
でも、あともう少しだけ、好きでいてもいいですか?
「好きだよ。大好きだよー!」
私は受け取ったばかりの紙飛行機を、もう一度大空に向かって飛ばした。
fin
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