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「何をしに来たの?」
「何...って?」
質問の意図がわからない、という声音で彼は首をかしげた。
彼...そう、おそらく彼。
メガネをはずした私には、"人型のぼんやり"としか認識できないけれど。
「そういうキミは、分かりやすいね。」
「...は?」
「いかにも、っていう感じだ。」
いかにも?
私は、やはりそう見えるのだろうか。
好きでこうなった訳じゃない...はず、なのに。
「馬鹿にしてるのね」
「まさか! 気分を害したなら謝るよ。」
「...謝罪なんていらない。」
見ず知らずの彼の謝罪が、いまさら何になる。
「昔からよく、言葉足らずだと怒られるんだ。
悪気はないから、大目に見てもらえるとうれしいな。」
「...そう。それならもう気にしないから、どっか行ってくれる?」
「え、どうして?」
「どうしてって...、...ハァ。」
会ったばかりだけど、彼のことが少し分かってきた。
彼が怒られるのは、きっと伝達不足のせいだけじゃない。
...どうせ理解できないなら、話してしまっても良いだろうか。
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