「こんな世界...」

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しばらくは風の音だけが鳴いていた。 そして、私を支える柵が少しだけ揺れて、 彼は、私の横で口を開いた。 「でも、どうしてここに? 他の方法だってあっただろうに。」 こんな話を聞いて面白いはずがないのに、 いつのまにか間を詰めて、どこか嬉しそうにしているのは何故だろう。 「どうせお前は空も飛べないんだろう、って。そう言われたからよ。」 「人間なら、誰だって飛べないじゃないか。」 「自力では飛べないけど、いくらだって手段はあるでしょ。」 「...その意欲すら見えない、ってコトが言いたかったのかな?」 「大方そういう事なんでしょうね。夢すら掴めないナマケモノだろ、って。」 「ふうん...」 どうしてそんなに、嬉しそうなの。 人の不幸が、そんなに楽しいの。 「あ、ごめんよ、茶化した訳じゃないんだ。 ただ、こんなにも僕と似た境遇の人に会えて、嬉しくって...」 「似た境遇?私と貴方が? どうして?」 今だって、柵越しの会話だ。 こちらと向こう。何一つ同じなんかじゃない。 いくら近くたって、私と同じ人なんかいない。 そう、思っていた。
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