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「...っ!」
一瞬、遅れた。
でも一瞬。ほんの一瞬。
大丈夫。まだ間に合う。
間に合わせる!
「手を!!」
さっきまでとは比にならない風が耳を掠めて、体を押し上げて、私の邪魔をする。
声が届かない。
...ちがう、届かせなきゃ。
「伸ばして!!!」
ぎゅっと閉じていた彼の目が開いたのと、
手が上に伸ばされたのと、
私がそれを掴んだのは、ほぼ同時で。
そのまま、一緒に落ちていく感覚が、
浮いていくようにすら、感じられて、
意識が飛んだのと、結末を迎えたのと、どちらが先か。
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