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「いや、これが本当のことでね?昨日いきなり現れて、私も驚いちゃって」
アハハッと笑う私を、既に口を閉じたカナコがジロッと睨む。
「ユリって危ないよね」
「違うって!本当なんだって!」
私は、また目を閉じる。
ほら、やっぱり目の前にいる。
誰だかわからないけれど、とってもカッコいい彼が笑っている。
声が聞こえないのは残念だけれど、表情を見れば意志疎通はできるし問題はない。
「…寒っ。戻ろ」
「ちょっと!カナコ!」
どうやら信じていないのか、カナコはそそくさと屋上から出て行く。
「本当なのに…」
寒空の下、私の声だけがポツンと切なく響いた。
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