夜風

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「子供は欲しくないけど母乳はあげてみたいよね」 牛乳を飲み始めたばかりの私に対して彼女は言った。 そんな彼女の発言に飲んでいた牛乳を吹き出しそうになり、なんとか飲み込んだ私は彼女に訊き返した。 「それは……子供ができないと母乳はあげられないんじゃないの?」 「そお? あたし、今ならできるんじゃないかと思うんだけど」 「なにを根拠に」  「四月五日。覚えてるよね」  そう訊かれた途端、私の心臓が小さく跳ねた。  忘れっこない。だって先週の今日のことだ。でも、私は、一応、無表情を装い、無言で頷くだけにとどめた。
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