神さまどうか魔神を助けて下さい。

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 私は指輪の魔神である。  指輪をこすった者を主人とし、  願いを三つ叶えて差し上げる。  今まで沢山の主人に出会い、  願いを叶えてきた。   ほとんどの者が叶えるようとするのは  欲にまみれている願いだった。  他人の不幸を顧みず、  手にした財宝に喜んでいた。  私はそれが嫌だった。  人間は何て欲深いのだろう、  何度もそう思った。  だから私は、  次の主人に嘘をついた。  その主人は幼いこどもだった。  古びた服を着ていて、  貧しいのがわかる。  “私は一つだけ願いを叶えられる。”  そう言うと主人は、  “じゃあ、兄ちゃんと会えるまで一緒にいて”  と言った。  私は「おやすいご用さ」と  快諾して見せた。  小さな主人との生活は  なかなかに良いもので、  魔法で食べ物を出してやり、  水を沸かして体を洗ってやり、  まるで自分の弟かのように思えた。  夜空がきれいな日、  主人と星を眺めた。  星座に興味があるようで、  私にあれは何座か、これは何座か、  興奮した様子で聞いてきた。  一つずつ答えていくことは、  大変だったけれども、  楽しかった。  人の欲のみを知っていた私は、  家族の暖かさを知ったと思う。  しかし、  それは長く続かなかった。  病で亡くなってしまった。  苦しむ主人に毛布を掛けるのは  心が痛かった。  動かなくなった主人を埋めるのは  心が痛かった。  なぜ、主人は願わなかったのか。  私は三つの願いを叶えられるのに、  主人は一つしか願わなかった。  病を直してほしいだの、  兄を生き返らせてほしいだの、  願えば叶えて差し上げたのに。  ああ神様よ、  助けて下さい。  ああ神様よ、  時間を戻して下さい。  あの日主人が言った、  “兄ちゃんと会えるまで”を  変えてください。  あの日私が言った、  “一つだけ叶えられる”を  変えてください。  私は今のままでは一緒にいられないのです。  どうか、どうか、  管轄外だと言わないで。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!