小さな神様

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優は28才、見た目が幼く、高校生でも十分に通るであろう童顔をしている。 幼い頃に両親に捨てられ、優は祖父に引き取られた。 彼を引き取って育てていた祖父がやがて寝たきりになり、収入の道を絶たれた優は、万引きで生計を立てるようになる。 販売店の店頭に並ぶ食品は、対価を支払って購入する。 それを勝手に持ち帰るのは犯罪。 脳の発達障害がある優にとって、そういった事に対する善悪の区別は朧げだった。 食べ物がある場所からその日、自分たちの糊口を養うだけの食べ物を持ち帰る。 自分達の命をつなぐ為の食料を持ち返るだけ。 罪の意識のない優の行動は自然体で、それ故に誰かに見咎められる事がなく、優の万引き生活は随分と長く続いた。 しかし知的障害のある優に全介助を要する祖父の介護が満足に務まる筈も無く、ほどなくして優の祖父は他界する。 住民からの苦情で、市役所は腐敗しかけた祖父の遺体を、それはとても棺桶とは呼べない、簡易なベニヤ板で出来た箱に押し込み、焼き場で焼いた。 役所の職員は、白い布で包まれた遺骨を優に手渡すだけで、そのまま引き上げて行き、直後、祖父の年金が停止した。 祖父の指示で、年金から細々と支払っていた家賃が滞納するようになる。 アパートを追い出された優はホームレスと化した。 万引きで飢えを凌ぎ、公園のベンチで寝泊りをする怪しげな若い男。 ホームレスと化した優が食べ物を盗んで逮捕されるまで、そう時間は掛からなかった。 image=510260530.jpg
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