小さな神様

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刑務所と云うのは意外に老人の多い場所である。 福祉が提供している救済制度、生活保護や、それ以外の給付金制度、貸付金制度、 必要な要件を満たしていれば誰にでも支給されるものだ。 しかし数多の制度は有るものの、どれもかなり手続きに手間と知識が必要である。 この手続きを踏める者は福祉の網に救われるのだが、この手続きを踏めない者は福祉の網から漏れる。 この福祉の網から漏れた者は、万引きや無銭飲食などの軽微な犯罪を犯し、刑務所に落ちてしまうのだ。 この様な人々、所謂、「懲役太郎」の多くが、保護されなかった老人だ。 優はそんな老人達の面倒をよく見た。 優にとって老人の面倒をみる事は、祖父との生活の中培われた自分のアイデンティティそのものだったのだろう。 だから優は自分のもてる総てで老人を守ろうとする。 若い受刑者から虐待を受ける事の多い老人達を、優は体を張ってその虐待から守った。 自分がどんなに傷つこうと、優は彼らを守る事を諦めなかった。 畢竟、優の居る工場では、そういった陰湿な行為をする者は影を潜め、ある意味、矯正施設としては理想的な環境になることが多い。 しかしここは社会ではなく、社会からはみ出した人間の集まる塀の中である。 優の良心は度々、ここの規則と衝突をし、優は、こうしていつも懲罰房に送れられる事になるのである。
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