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「ってことで、俺は何らかの理由で、この場合は気まぐれな神を仮定した方が早いから、そいつによって飛ばされたんだ。何故か日本語をマスターした形で。量子力学に関して正しく理解していることから、死の直前であったことは間違いない。頼む。納得したからゆっくり眠らせてくれ」
まさかの睡眠妨害をしている相手に眠ることを頼まれるとは。まあ、彼の場合は永眠だが。
「神もサイコロを振るってことですね」
「だな。非現実的なことも受けいなければ生きていけないこともあるよ。量子力学とか」
定期的に言うね、アインシュタイン。と、僕は信じるしかなくなった。よくアインシュタインは晩年、量子力学を理解できずにはみ出したと言われるが、それは間違い。彼は真面目に量子力学を研究していたのだ。多分、あの時代で最も量子力学を研究した人だろう。
「解りましたよ。で、どうしろと?」
「そう。そこ。納得したから帰れるかな?」
期待で輝く目で見ないでと、僕は呆れる。この人、相談しているようで自己解決しているんだよ。うん。寝よう。
「寝ればいいんじゃないですか。枕、貸しますよ」
「そ、そうだな。うん」
まさかアインシュタインと添い寝する日が来るとは。僕はちょっとドキドキした。が、相手は男でさらに死人だ。さっさと眠気の勝利。
「ん?」
翌朝。もちろんアインシュタインはいなかった。しかし--
「何でこんなところにサイコロが?」
枕の上には、何故かサイコロが残されていたのだった。
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