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プロローグ 工房都市前の決戦
鳥の視点を持つものなら眼下の規則正しく並ぶ数万の物体に目を引かれ、美しさを感じたかもしれない。だがその一つ一つが槍剣を携え盾を構えた人間であることに気付いた時もそう思えたろうか。
兵事に疎いものならば、武装した兵が整列していることに困惑し、王者の閲兵式かと思うのがせいぜいだろう。そうでないなら一目で悟ったはずだ。大きな戦いの直前なのだと。
この年は入植暦で、宇宙協会の星船に乗った祖先が、惑星開発公社によって天地創造されたこの世界に降り立ってから数えて二十四万二千三十四年とされている。
これを一種の神話だと考える人々はもちろん、文字通り遠い過去の事実を記した歴史であると考える者たちにとっても二十四万某との数字は日常の感覚としては大きすぎた。初代皇帝の即位年を元年とする帝国暦二千百八年とするのが一般的であろう。
この冬、皇帝の不可解な崩御と皇太子の病没、手際良すぎる皇女の仮帝への即位。主要な帝位継承権者の死亡や行方不明と事件が続いた。このため帝都はざわついてはいたが、制度な磐石さと官僚的な硬直の複合体である帝国にとって政体が揺らぐほどではなかった。
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