プロローグ 工房都市前の決戦

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 こうして眼下の模様が戦いに臨む兵馬の群れだと理解できればその両軍を区別するのは容易いことであろう。北方にある都市、アバロンへ通じる道を封鎖するように北西から南東へ短く、重装歩兵が横長の短長方形に整列した陣が、交互に配置され、市松模様をなすのが黒色を基調とする帝国軍。それを押し包むように三つの横長の隊列、横隊をもって迫るのが同盟軍である。  数的劣勢下で戦うことが多い帝国軍であるがこの戦ではそれが顕著だった。同盟軍の歩兵は長い槍を担いだパイク兵を中心に六万を数えたが、対する帝国重装歩兵は三軍団、約一万五千が結集したに過ぎない。帝都での混乱による動員の遅れが原因だった。さらに三軍団が進軍中だが彼等はこの戦いに寄与することはなかった。  騎兵は同盟軍が一万三千騎に対し帝国軍一万騎弱と数的には拮抗している。しかし、帝国との盟約によりて集まった北方域部族の軽装騎兵が大半、七千騎ほどを占める。盟約により集まった軽騎兵は、様々な集団からの寄せあつめで統一した装備もなく、行動もとれない勇猛さだけがとりえ(と言えるのなら)の集団である。勝った後の追撃には威力を発揮するが、それ以外には使い辛い。パイク兵の隊列への突撃など夢物語の戦力だ。  帝国の正規軍騎兵は残りの三千騎に満たない数しかいない。これでも結集した三軍団の所属の騎兵に加え、結集中の三軍団の騎兵も分離・先行して結集した結果である。     
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