プロローグ 工房都市前の決戦

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 同盟軍の騎兵は重装騎兵がその大半を占め、一万騎強を擁している。その主任務は帝国重装歩兵への突撃。投擲も可能な短槍と短めの剣を主武装とする帝国重装歩兵は決して騎兵の突撃に強いわけではない。  対する帝国の正規騎兵は兵士はもちろんその乗馬までもが黒鎧で防御した"重装騎兵"だ。全員がピストルを装備し、敵騎兵を狩ることに特化した訓練を受けている。黒鎧は強靭な防御力とともに、非帝国軍の軽騎兵並の機動力をも保証している。もし自由な機動がかなう平原で対峙したならこの四対1以上の頭数の差をものともしないだろう。しかし、後ろに守るべき都市がある防衛戦で退くことが叶わない局面におかれれば苦戦するかもしれない。  帝国軍は比高五メートルにも満たない丘と湿地の間を街道が通る場所に陣取った。丘を中心に右翼は湿地の中へと、二百五十人ほどで構成されるコホルスごと、市松模様のように布陣する。正規騎兵は少数が右翼を援護するため最右翼に置かれたが、他は丘の後ろに配置され、盟約の軽騎兵はそのさらに背後に散蒔かれたようにたむろしている。  同盟軍は丘の正面の正面軍、その左右にそれぞれパイク兵の横隊を並べた。その長槍(パイク)の穂先列の整然さは幾つかの国軍の寄せ集めとは思えない。パイク兵の力の本質はその統制された長槍の動きにある。これだけで侮れない練度を持つことが見てとれる。     
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