プロローグ 工房都市前の決戦

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 尤もかかっているのは彼等の命なのだ、必死にもなるだろう。帝国重装歩兵はその機動力を戦場で如何なく発揮する。敵の戦列の最も弱い箇所、乱れた隊列へと機動・集中して突入してくる。パイク兵はその長い槍を構えために両手が塞がっているし、そもそもパイク以外ろくな武器を持たず、鎧も簡単な革製のものがせいぜいだ。短く取り回し易い両刃剣のグラディウスを手にして黒鎧を装備した帝国重装歩兵に隊列内に飛び込まれたら抵抗のしようがない。  同盟側もそれは十分に理解している。実践、すなわち敗北の経験から、帝国重装歩兵への対応策は"十分な数の"パイク兵をそろえ、損害を後列からすぐ穴埋めすること。つまりは数で押し潰すこと。そしてこれは気休めほどの対策だがロングソードを携えた段平兵を用意して、パイク兵戦列の懐に入った帝国歩兵に対抗することだった。  この方針は広く徹底され、特にパイク兵には徹底されている。それをより簡単にした形でパイク兵は頭に叩き込んだ。戦場全体の勝敗とは別に隊列を乱すことは即、自分の命にかかわるのだと。  先に仕懸けたのは帝国軍の援軍が到着する前に埒をあげたい同盟側だった。中央、左右の三軍がゆっくりと前進する。中央軍は直進し両翼は中央軍との境を軸として帝国軍を押し包むように。     
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