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帝国軍はコホルスごと接敵してはその動きを押し止めようとする。その様子は大きな槍の壁に、黒い塊が衝突するようだ。戦理から言えばコルホスがパイク兵の戦列と接触したなら、その周囲のパイク兵がコルホスを包み込むよう半包囲すべきだ。だが同盟側は局所的なそのような複雑な機動は自軍には無理であるか帝国軍に隙をつくる原因になると考えたのだろう、歩調を合せただひたすら平押しの前進を続ける。
疲弊したコホルスが後退し、控えていたコホルスが交代に前に出る。散発的な銃撃が同盟軍から繰り返されるも銃撃では黒鎧は貫けないし、帝国の銃兵は少ない。それに対して帝国側から同様に数少ない弓兵や銃兵の返礼。
同盟の地道な前進はその中央と右翼では成功しつつあるように思えた。帝国軍を押さえ込み丘のへ圧迫していた。一方、同盟の左翼では湿地に足をとられ、思うように前進できていなかった。
しかし、これも左翼が湿地の中を前進するという時点で予想されていたことで、失敗とは認識されていない。同盟軍はこの時点で戦況は有利に進みつつあり、少くとも帝国軍を丘に押し込むことは可能であろうと楽観しはじめていた。
その綻びは小さなものだった。それも帝国の罠だったとも、意図せざることだったとも言われる。
同盟左翼の歩兵が何人か穴にはまったのだ。いや穴と言うより泥土の深みに。平時なら周囲の兵に助けだされただろう些細なアクシデントだ。また全員が一つの深みにはまったわけでもない。こちらで三人、あちらで一人というふうに十数名が災厄にあう。
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