プロローグ 工房都市前の決戦

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 同盟軍パイク兵は帝国軍へ着実に前進するように厳命されていたし、足並みの乱れは自らの命を失うことになることも理解していた。しかし、戦いでもないアクシデントで泥土の中で引き上げてくれるよう懇願する戦友を助けようとする兵士が続出した。  それに兵士がはまったからといって泥穴の所在は知れてもそれが埋まったわけではない。続けてはまる者、はまって藻掻く頭を踏みつけ前進する兵士、助けようとする兵士、双方を制止する兵士、悲鳴、怨嗟、怒号。  帝国軍はその混乱を見逃しはしない。短槍を投擲した。短槍は整然と並んだパイクの穂先には撥ね除けられるが、穂先の乱れた箇所からその隊列へ飛び込み乱れを拡大した。  二投目の短槍はその乱れの大きい箇所に集中し、そこへ帝国重装歩兵が突進した。結果、数十人ではあるが帝国重装歩兵のパイク兵の隊列への侵入ゆるしてしまった。 懐に入られたパイク兵はやはりもろいかった。長槍は役に立たずろくな防具を着ていない彼らは、駆け付けたダンビラ兵が帝国重装兵を戦列外においやったり、"撲殺"するまでほとんど抵抗もできずにそのグラディウスの刃にかかった。その過程で深みにはまった兵のほとんどは踏み付けにされて泥の中に沈んでいった。  この混乱から隊列を再び整えるのに時間もかかり、再開された前進も深みを探りつつの及び腰になった。たとえ死ぬにしても味方に泥の中に踏み込まれるようにして死ぬのは誰もが御免被りたいのだ。     
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