RAP of GOD

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RAP of GOD

 「大総統」は、国家の象徴ともいえる石造りの古城の頂点に立ち、民衆に向けて演説をしていた。 「我々は、今日、憎き敵国に最大・最後の攻撃を仕掛ける!この古城から始まった我が国家も、今や世界で最大になった。今こそ、我々が持つ全ての武力を行使し、残る二つの国を攻め落とす時!」  古城の周りの広場に集まった膨大な数の民衆が、歓声をあげる。その最中にも、古城を警護するように取り囲む軍人たちは、不審な動きをする者がいないかを見張っていた。 「今のところ、異常はありません」 「了解、引き続き監視を怠るな」  監視の軍人からの報告を受け、大総統の側近の男が重々しい口調で返事をする。  側近の男は、演説を続ける大総統を見上げながら、これまでの道のりを振り返った。  今の大総統は、この国を統べる家門の15代目の当主である。自分は大総統が幼い頃から教育係として彼に付き従い、勉強や武道を教えてきた。その全てが今日に繋がっていたと考えると、早くも涙が出てきそうである。    だが、まだ泣くわけにはいかない。大総統が武力によって世界を統べるさまをこの目で見るまでは、涙など不要だ。なにより、泣いているところなど見られれば、大総統に喝を入れられてしまう。 「長きにわたり反抗を続けてきた敵国も、弱りはじめている。攻めるなら、今が好機である!」  古城から広場へと響く、大総統の威厳ある声。側近の男は、その姿に惚れ惚れとしていた。  ーーだが。 「敵国の兵は痩せ痩せ萎え萎え、我々の国は夜明け前。  今がチャンス、敵は八苦(ハック)、国を奪取(ダッシュ)すりゃテンションアップ!」  大総統の様子が、どこかおかしい。
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