たとえ、苦しくても。

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老人は少女の話をきき、満足げな笑みを浮かべた。 「非常に感心する話をありがとう。そうだ、食後の飲み物もごちそうしよう」 「いいんですか」 「もちろんだ。私もいっしょにいただくことにするよ」 老人がキッチンに入るのを見送った少女は、ふと、となりの犬に目をやった。触りごこちが良さそうだ。思わず撫でたい衝動に駆られる。しかし、自分の手はよごれている。このけがれのない、美しい犬を撫でるわけにいかない。そう思って自分の左手のひらを見つめた。 すると少女は驚いた。汚れていたはずの手が、真っ白になっていたのだから。しかも心なしか、金粉がついているかのようにきらきらと光っているようにもみえる。 「おまちどうさま。ホットココアだよ」 とん、とマグカップを置かれ、少女は顔を上げた。 「あ…ありがとうございます」 いったん忘れることにして、さっそくカップに口をつける。ココアを飲むのは、少女にとってひとつの小さな夢だった。初めて体験するはずの、その甘く優しい味わいに、少女はなぜか懐かしいきもちになった。 老人は穏やかな表情で、椅子に座りなおす。マグカップを手にしながら、「ほかになにか要望はないかい」と少女にたずねた。「遠慮はいらないよ。すきなことを言ってごらん。お菓子でも、お風呂でも、服でも、睡眠でも。なんでもかなうとしたら?」 「それなら…」 少女は言いにくそうに口を開いた。
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