第1章.隣の席の彼

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 いつになくざわつく教室。ウチのクラスにというより、自分の学校に男子がいないわけじゃない。自分が入学する数年前までは、女子だけの学校だったらしくそこから共学になったとはいえ、女子だらけの学校にわざわざ入って来る男子は珍しい。  それでも一つのクラスに8対2くらいの割合で、いることはいた程度。どうしてもいつも話すのは女子だけになるわけで、そうなると興味も意識も身近な所から生まれるかと言うと、現実問題として厳しかった。  そこへ他校から新たに編入してくるという話が昨日辺りから浮いて来てて、気にならないわけがなかった。結局のところ、新しい出会いにみんな惹かれるってところなんだと思う。  朝のHR《ホームルーム》が始まり、教室内の視線は先生がいつも立ってる場所に狙いを定めていた。 「えーと、もう分かってると思うけど、今日から編入の男子ふたり。みんな、よろしくね」 「七瀬 (ななせ たすく)です。どうも」 「上城 比呂(わいじょう ひろ)っす。よろしくです」 「それじゃあ、七瀬くんは窓側の、葛西さんの隣に座ってくれる? 上城くんは、廊下側の席へお願いね」  葛西さんの隣……あ、わたしか。隣ってだけで、何か声をかけるべきなんだろうかなんて、思っていたけど特に何も起こらなかった。  名前からして個性を感じた女子たちが一斉にざわつき始め、予想通り休み時間になると同時に、質問攻めをする為に隣の席の彼と、廊下側の彼の席に人だかりを作っていた。 「どっち系?」 「や、何とも言えないけど」 「席が隣なら七瀬でよくない?」 「そう言われましても……」 「てか、どこで声をかければいいのか問題ってやつ」 「だね」  確かにすぐ隣に新たな男子が座って来た。だけど、決して簡単じゃない。真っ先に声でもかけようものなら、予想はつくけどあまりよろしくないことが起きることは目に見えてた。 「でも、よかったじゃん?」 「なにが?」 「どっちもよさげで」 「あー、顔よく見てない。名前だけしか入ってきてなかった」 「そか。まっ、その内に見れるっしょ? 隣だし」 「そのうちね」  隣だから顔が見れるかって言われれば、割と微妙と言えば微妙だった。じっくり見つめないと分からないわけで。でもとりあえずは、声をかけるタイミングとチャンスを探らなければ始まらない。そう思えた。
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