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波に乗ることが出来ない。これすなわち、流行の波という意味。確かに新たな出会いに期待を膨らませてはいたけれど、みんな一緒に話しかける。なんてことは好きじゃなかった。そうなると、何かのきっかけでもなければ、声をかけることが出来なくなる。
仲良くなるのがきっかけで付き合えるなら苦労はしない。そう言えば、元カレのあいつとはどうやって付き合ったのだろう。その辺をあまり意識しないまま、付き合っていたような気がする。
考えても話せないし、無理に考えても始まることも無い。そう思っていたら、自然と机に伏して、春風と共に安らかな寝息を立てていた。色気を見せる、そんなのは全くの無縁……そう思ってた。
「おい、ちょっと……」
「ん~~眠い。ごめ、今気持ちいい所だから、声かけないでくれると喜ぶから」
「いや、じゃなくて、呼んでるんだけど?」
「はぁ? 誰が? ってか、さっきから誰……って、な、七瀬さん?」
「てか、顔やべえ。顔が机になってるって、マジで面白すぎ」
顔が机って何? そう思って手鏡を覗いてみた。うわ、机の痕が残ってるし! しかも見られて笑われてるとか嘘でしょ?
「えと、呼んでるって?」
「何かの係とか? 俺は言われたから呼んだだけ。そんだけ」
「あ、どうも」
そっか、そう言えばそんなものを受けてた気がした。意外な所からきっかけが生まれた。でも最悪だった。たぶん印象に残ったとは思う。机顔の女子として。隣の席ってこれがあるから怖いなぁ。
一限が始まるまでに時間があったので、廊下に出て声かけのヌシを探してみると、すぐに声をかけられた。かけて来たのは友達だったけど。
「綾希~こっち! で、顔見た?」
「呼び出したのって、沙奈? や、顔見れてない。それどころじゃなかった」
「きっかけ作ったのに。何で? 何があったん?」
「寝てた。グースカと。いつも通りに机に伏して」
「期待を裏切らない子やね。そういうとこ、応援したくなる。でも、七瀬が声かけてくれた?」
「応援どうも。そう、七瀬さん」
「さん付けって、それはよろしくない! 距離離れるし。呼び捨てで呼んでみ? たぶん、喜ぶ」
「それはさすがに無理。そういうのは沙奈に任せるし」
「なら、そうする。恨みっこなし。おーけー?」
「何を恨むのか知らないけど、別にいいよ」
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