第1章.隣の席の彼

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(たすく)は、どんなのが好みなん?」 「面白い奴」 「そっかぁ、じゃあ当てはまるな」  朝、教室に入ったらそんな会話の光景を目の当たりにしてしまった。沙奈の言葉ってそういう意味だったんだ。でも今のところは、そんな気持ちにすらなってないからどうでもいいかな。  そのまま自分の席に着こうとすると、隣席の彼に何でか声をかけられてしまう。沙奈が何かを話したのだろうか。  肝心の沙奈は、彼から離れて廊下側席の上城(わいじょう)くんの元に行っていた。何だかやる気見せてる気がするのは、わたしの気のせいだろうか。 「机って眠くなるよな?」 「た、たぶん?」 「隣だし、話していいか?」 「い、いいんじゃないでしょうか」  よく分からないけれど、机顔が彼のツボに上手くハマッてしまったらしい。 「あいつ、友達なの?」  七瀬くんが顔を向けた先にいるのは沙奈だった。ここは別に隠すことじゃないし、素直に肯定しとく。 「そうだけど、沙奈がなに?」 「葛西はどうか知らないけど、あいつ慣れすぎ。ちょっと苦手なんだよな」 「あ、そうなんだ。友達だからあんまり言わないでくれると……」  慣れすぎってなんだろ。沙奈はわたしと違って壁を作らないタイプだから、何気に人気あるんだよね。分かる気がする。 「言わないけど、あいつに比べて葛西は大人しそうだし真面目そうだから安心する。マジで」 「それ、けなしてる?」 「褒めてる」 「とりあえず沙奈のこと、悪く思わないでやってくれる?」 「思わない。代わりに、葛西のことを良く思ってていいか?」  何が言いたいのかさっぱりだけど、たぶん話し相手が欲しいし、隣だから話しかけて来てるんじゃないだろうか。 「良くわかんないけど、それでどうぞ」 「んじゃ、これからよろ! 七瀬って呼んでいいから」 「七瀬」 「いや、そうじゃなくて……まぁいいか」  隣だから仕方ない。今日以降、七瀬から話しかけられるのをそう思うしかなかった。
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