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春といえば別れと出会いの季節。隣の席に七瀬。廊下側席に上城。何となくのきっかけが出来たのは七瀬の方。良いか悪いかって言われれば良かったけど、この季節のわたしは近くの男子よりも春眠が優勢だった。
「何でそんなに寝れんの?」
「眠いし、春だから」
「分からなくも無いけど隣になったし、話をしようぜ?」
「……後でならいくらでも」
「いや、今じゃないと合わねえし」
隣の席になった新たな男子の七瀬。今のとこ、春眠がわたしの癒しになっていて、他の女子より若干冷めてる感じで返事を返している。
「俺と話がしたいんじゃなかったのか?」
「誰情報?」
「葛西の友達」
「それ、誤情報だから。夏まで保留でよろしく」
「――待てねえよ」
彼氏が今すぐ欲しいとか思ってたらこんな返しはしないけど、隣の七瀬に今すぐどうこうとか、そんなのは無くてちょっと分かんなくなってた。だから、春眠ということにしてた。
「妨害よくない」
「……悪ぃ。じゃあ、黙っとく」
「ありがと」
ようやく静かになって深い眠りにつこうとした。だけど顔を机に伏したまま寝ると、この前みたくなりそうだったし、また七瀬をツボらせるのは何となく嫌だと思って、首を動かして顔を横に直すことにした。
「……なにしてんの?」
「面白いから眺めてた」
なんか気配を感じていてばれない加減で瞼を開けていたのに、どうしてかな。ってくらいに彼に見られてた。
「寝顔フェチはさすがにひく」
「ちげーし。てか、机顔引退すんの?」
「する。もうしない」
「残念。それだけじゃないからいいけど」
「人気は一日限りだった?」
「そうじゃねえけど、そんなもんだろ。情報聞き出したら、後は普通にその辺の男と同じになるんだろ?」
その辺の男って、クラスの男子って意味だろうか。
「その辺の基準なんて知らないけど。わたしは七瀬のこと知らないし」
「だから、話がしたいって言った。てか、起きたなら……」
「うん、もうすぐ三限だから」
「マジかよ……」
ホントにタイミング悪い。この場合は寝てたわたしが問題だったけど。隣だし、いつでも話なんて出来ると思うけどね。タイミングが合えば。
「はぁ~~……難易度たけぇ」
彼の呟きに気になりながらも、昼になるまで睡魔との戦いが始まっていた。
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