第1章.隣の席の彼

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 春といえば別れと出会いの季節。隣の席に七瀬。廊下側席に上城。何となくのきっかけが出来たのは七瀬の方。良いか悪いかって言われれば良かったけど、この季節のわたしは近くの男子よりも春眠が優勢だった。 「何でそんなに寝れんの?」 「眠いし、春だから」 「分からなくも無いけど隣になったし、話をしようぜ?」 「……後でならいくらでも」 「いや、今じゃないと合わねえし」  隣の席になった新たな男子の七瀬。今のとこ、春眠がわたしの癒しになっていて、他の女子より若干冷めてる感じで返事を返している。 「俺と話がしたいんじゃなかったのか?」 「誰情報?」 「葛西の友達」 「それ、誤情報だから。夏まで保留でよろしく」 「――待てねえよ」  彼氏が今すぐ欲しいとか思ってたらこんな返しはしないけど、隣の七瀬に今すぐどうこうとか、そんなのは無くてちょっと分かんなくなってた。だから、春眠ということにしてた。 「妨害よくない」 「……悪ぃ。じゃあ、黙っとく」 「ありがと」  ようやく静かになって深い眠りにつこうとした。だけど顔を机に伏したまま寝ると、この前みたくなりそうだったし、また七瀬をツボらせるのは何となく嫌だと思って、首を動かして顔を横に直すことにした。 「……なにしてんの?」 「面白いから眺めてた」  なんか気配を感じていてばれない加減で瞼を開けていたのに、どうしてかな。ってくらいに彼に見られてた。 「寝顔フェチはさすがにひく」 「ちげーし。てか、机顔引退すんの?」 「する。もうしない」 「残念。それだけじゃないからいいけど」 「人気は一日限りだった?」 「そうじゃねえけど、そんなもんだろ。情報聞き出したら、後は普通にその辺の男と同じになるんだろ?」  その辺の男って、クラスの男子って意味だろうか。 「その辺の基準なんて知らないけど。わたしは七瀬のこと知らないし」 「だから、話がしたいって言った。てか、起きたなら……」 「うん、もうすぐ三限だから」 「マジかよ……」  ホントにタイミング悪い。この場合は寝てたわたしが問題だったけど。隣だし、いつでも話なんて出来ると思うけどね。タイミングが合えば。 「はぁ~~……難易度たけぇ」  彼の呟きに気になりながらも、昼になるまで睡魔との戦いが始まっていた。
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