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父が亡くなったと知らされた時、花衣は一人で自宅にいた。
念願だった服飾専門学校に合格し、デザイナーになるための夢の一歩を踏み出そうとしていた矢先の、二度目の訃報だった。
香代が亡くなった時も大きなショックを受けたが、父の死はそれを遥かに上回るものだった。
そんな花衣を、更なる悲劇が襲った。
秋介は三千万円もの生命保険に入っており、香代の飛行機事故での見舞い金も合わせて、花衣にはおよそ六千万円の遺産が入る予定だった。
しかし秋介の遺言を預かっているという弁護士が現れて、生命保険金の受取人は花衣でなく伯父の景一だと告げた。
秋介は生命保険金も一戸建ての自宅も車も、その他の遺産全てを、兄、景一に渡すと遺言を書いていた。
また自分が受け取った妻の遺産は、花衣に渡さず自分の故郷の菩提寺に寄付するとも書かれていた。
なぜ父親がそんな冷たい仕打ちを自分にするのか、花衣は最初、意味が分からなかった。
しかし事情を知る伯父から真相を聞かされて、さらに父の遺品から問題のDNA検査の結果を記した書類も見つかり、彼女は伯父の話が真実なのだと知った。
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