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「東京も充分、ファッションの街として有名だぞ」
「それはそうですけど、東京じゃあ日本人としてのセンスしか身につかないじゃないですか。私は別の国の風土と空気を感じて、今とは違う感性を持ちたいんです」
「ふーん。それで手っとり早く金が欲しくて、あのいかがわしい店でのバイトか」
「いかがわしいって……、ただちょっと派手な恰好をして、給仕をするだけです」
「売春を斡旋していたじゃないか」
「それは、……入ってから、知りました。だけどせっかく採用されたし、時給もいいから……」
「だから売春もやむなしだと?」
「そんなことは言っていません……!」
花衣は一瞬声を荒げてから、またすぐに顔をうつむかせた。
「……あの店は、今週末で辞める予定だったんです」
「それでまた別のガールズバーで働くのか? また似たようなことが起きるぞ」
「……今日のことは感謝しています。マネージャーから、あなたが助けて下さったのだと聞きました。ありがとうございます」
深々と頭を下げてから、花衣は「でも」と続けた。
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